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泉美木蘭
2020.8.12 11:33

「人生を謳歌しない自由」を希求する不思議

釈放された周庭氏は、
「今まで4回逮捕されたが、正直、今回は一番怖かった、
一番きつかった」
と言っていた。
二度と釈放されないことも十分に考えられる状態なのだから、
想像を絶するとてつもない恐怖と抑圧状態だと思う。
それでも
「香港の民主と自由のために闘う一員として後悔はしていない」
と述べ、マスコミの前で、国家安全維持法と警察の対応を批判
していた。本当にすごい人だ。
しかし、パスポートは押収されたそうで、彼女に自由はなく、
そして、すでに日常的に監視状態に置かれてしまっている。
「お家に帰れてよかったね、しばらく自粛していればもう安全」
という話ではまったくない。
人生を自分の意思で謳歌すること、
「自分にはこれをやる意味がある」と確信することに取り組むことを、
徹底的に封じ込められるのだから。

ところが日本は、真逆だ。
緊急事態宣言をはやく出してほしい、
自粛・ステイホームさせてほしい、
アプリを導入して「危険人物」の動きを監視したい、
ハメを外している酒場は警察に踏み込ませて取り潰せばいい、
自室に閉じこもったままオンラインで楽しめばよい、
ガイドラインで自分の一挙手一投足を決めてほしい、

「民主主義は脇に置いといて、権力に人権を引き渡し、
ガイドラインに従順な国民として、自分の意思ではなく、
決められたように行動して、他人と違わないことに安心したい」

そう言っているようなものだ。
しかもそれが、科学的にもウイルス学的にまったく「安全」では
ないばかりか、経済的破綻へとひたすら進んでいく。
「封じ込められる自由」「人生を謳歌しない自由」を希求して
どうするんだ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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